Un BUTTER


「…………言葉もございません」

「…………」

「てか、じゃあ、わたしが、裸だった理由って…?」

「それも覚えてないのかよ」

「あれ??…もしかして…やって、ないの?」

 
はああぁ、と大きくため息をつく六神。

散々迷惑という名の武勇伝を作った私は、それでも尚自分の性的魅力について問い詰めようとした。


「やって?やって、ないの??えっち、したんじゃないの?」

「…………」


何も言わない六神。

バカみたいなことを尋ねる私。


でもじゃあ、さっきまでの甘いだけの六神がいた理由って一体なんなの?

あたかも愛おしそうに、私というげろまみれになった女に、あんな深いキスを施した理由って。なに?


「ごめん。ごめん、なさい。私が悪いのは重々承知なんだけど。」

「…………」
 
「でも、さ。裸の彼女がいても襲わない理由って、なに?というか、なんで今まで、その……」

「…………」


だんまりだ。

私から目をそらすわけでもなく、じりりっと鋭い視線が、私の心臓とそれを取り巻く内臓をずきずきとつついてくる。

怒鳴って怒られるよりも、だんまりの方がずっと怖い。なにがどう悪かったのか要因と反省点を並べて怒られる方が十二分にいい。

なにも言われないと、自分はこの先何も期待されてないのかと思ってしまうから。


「ねえ、黙ってちゃ解決しないじゃん!私って、なんなの?彼女、なんだよね?!」


心の底から理解している。自分の秤も知らない女が、六神を問い詰める側ではないということは。

でも。なにか、口走っていないと。

もう二度と六神に口聞いてもらえそうにないんだもん。
 

抱かれたかったら素直に「抱いてください」とそういえばよかったんじゃん?

もし六神に「今はまだその時じゃない」って拒否されたら?

私と六神の仲だ。きっと「時を待とう」と思えるはずだし、六神だって時を待つ理由を300字以内でプレゼンしてくれるはずだ。



大人と並んで歩いているようでも、まだまだ歩幅は狭苦しい。なんでもないような顔していても、必死におくれをとらないよう皆の後をついて行っている私。

だってしょうがないじゃん。恋愛なんて、大学以来のことなんだから。


「むがみの、ばか……」
 
「…………」
 
「話したくないんなら、もう私、帰」
「さすがにげろまみれの女を抱こうとは思わないわー」

「へ?」

「全身げろまみれの身体を湯で拭いた後に勃つと思ってんのかアホ」


は?


「居酒屋での謝罪については100歩譲る。営業の鏡だからな俺。」

「…………」

「お前のげろまみれの服を着替えさせてその裸体を拭いてやったことについては120歩譲る。要領いいからな俺。」

「…………」


裸体とかいうなよ。


「だがしかし、それで抱けとまでいわれる筋合いはない!どう考えたってあり得ん!」

「は、はあ?!」

「お前さ、男は皆さかりたての中3男子とか思ってんじゃね?受験でストレス溜まる時期にあえて抜き専作って受験戦争勝ち取りにいくとか、そういう頭ですかあ?」

「……ぬき専って…クズ臭すごいんですけど」


なんだろう。さっきまでナーバスになっていた心が、目の前にいる誰かさんにより奮い立たされていく。

崖っぷちから深海に飛び込もうと覚悟を決めたところで、後ろから「ご飯だよ。」と呼び止められ、急に食欲わいてきたみたいな。

あれ?というか六神という人間って、こんなんだった?













    


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