Un BUTTER

「大体なあ、げろまみれのお前に加え、げろまみれの服まで手洗いした俺の母性愛に深く感謝しようとか思わないのか?!」


母性愛?なに言ってんの。

屈折している私が六神に母性を感じろと?


「それでも洗濯機はお前のげろで臭くなるんだぞ?!」


さっきから聞いてりゃこの男はげろげろげろげろと。

私の吐瀉物《としゃぶつ》素手で触って頂きありがとうございましたあ!


「げろまみれ後でも裸の彼女隣いて抱けないとかあんたEDなんじゃない?!下半身ポシャってんじゃない?!」

「ハア?!この期に及んでまだげろ沼セックスしろとか言ってんのか?!」

「あんたもし相手がギャルゲー美女だったら絶対吐瀉物まみれでもセックスしてるから。」

「どんな発想の天才だよ?!もういっそお前『ギャルゲー美女が吐瀉物にまみれた件』てタイトルのラノベ作家にでもなれ!」


伏せ字を必要とする語彙が、清々しいほどに飛び交っていた。

 
「あんたがEDだって証拠を差し出さない限り私はこのまま首つって死ぬから!じゃなきゃ私の身体がむくわれない!」

「アホか!俺はEDじゃないんで?!そんな証拠はどこ漁ってもありませんけど?」

「今すぐED証明書交付センターでエビデンス交付してきてもらってよ、ねえ頼むからあぁ!!」
 

多分、発想力と頭のおかしさでは私の勝利だ。

でも別れる原因となる一言を吐いたのは、六神の方だった。


「あのな、いっとっけど、げろまみれじゃなくてもお前のあんな貧相な身体で欲情はしねーよ?!」

「…………は、」

「さぞかし大事にされてるとか甚だ勘違いしちゃったんだろーな実来は」

「文学部の不死原《ふじわら》くんなら絶対そんなストレートな言い方しない」

「ふじわら?なんで文学部の不死原出てくんだよ?…てか、違う学部なのになんでお前が知ってんの?」  

「そっちこそなんで知ってんの?」 

「…王子で有名だから?」

「だよねえ。不死原くんて透明感あふれる王子様だったよねー。」

「お前よりも不死原のがまだ抱けるわ」

「不死原くんはあんたなんかに死んでも抱かれない」

「でしょーね!」


自分の身体に欲情しないと言われていることに対し、仮にも彼女の身体なんだけど?と言い返すべきだったのかもしれない。

でも六神のその言葉は、関係が深くなりすぎて、肉体関係に抵抗感を持つようになってしまったのだと理解するには充分だった。

ああ、なんでだろう?

なんでこんなにもむきにならなきゃならないんだろ?

なんでさっき、あんなに私―――


「……なんか、なんで付き合ってるのかわからなくなってきたわ。」

「生理前でさかってんなら額に諭吉でも貼って女向け風俗でもいってろ。」
 
「もういい。ムガミ、キライ。」

「ああ上等だわ。俺も吐瀉物撒き散らした挙げ句抱けとかいう女キライ。」


――――あんなにも好きだと思ってしまったのだろう。

女のキライは嘘だって見抜いてよ。

さっきの甘い六神、返してよ。


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