Un BUTTER

№.switching



家に帰ってスマホを見ると、まゆゆから、『うちらからの誕生日プレゼントは悪友との華金マンツーマン』というメッセージと、『六神に彼女いるって知らなくてなんかごめん。』という相反するメッセージが入っていた。

仕組まれた金曜の夜。

『光栄なことに、結局私たち二人は、改めて仲が悪いのだと再認識致しました。

あなた方の苦労が何一つ実らない結果となりましたが、あなた方の自業自得だということをお忘れなく。』

ネタは生まれなかったと知ったまゆゆは、どういう反応をするだろう。

そもそも私がまゆゆに、朋政先輩に告白されていたことを伝えていれば、仕組まれるなんてことはなかったはず。まだ先週のことだし、同じ会社の上司とのことだし、そんなすぐには相談出来なかったのだ。


『ごめん実来!非常事態で今から要件だけ伝える。後でこの優しくて優秀でかっこいい先輩が埋め合わせするから今すぐそのアルマジロ並みの脳みそフル回転させて!』

「……はい、フル回転させて頂きます。」


最初の「ごめん」が何も生かされてません。それが人にものを頼む時の態度ですか、朋政《ともまさ》先輩。


月曜の朝。まゆゆに話すべきか悩んでいた私に、そんな悠長な暇はなかった。自分を鼻にかける東京本部の朋政先輩から、内線がかかってきたのだ。

まさに今リアルタイムで渦中の人から内線電話がかかってきたというのに、ドキドキなどしている暇さえ貰えないらしい。 

そう、朋政先輩は、自然にやってのけるくらい、いじわるな人だ。


『東京港からの輸出でシップバックが6件発生したんだ。3件は広州で3件は釜山行き。6つとも申請代行でいってる。再輸出を頼みたいんだけど。』
 
「あー……まじですか。来週なら名古屋港からの本船でブッキングいけそうですけど。」

『馬鹿なの?横浜港にしてほしいから実来に頼んでるんだけど?それに来週じゃ間に合わない。今週にして。』

「20FTコンテナなら木曜出港でFCL1つ釜山行き空いてます。広州は早くても…土曜出港ですね。」

『馬鹿なの?それが分かってるから申請手続きを実来にお願いしてるんだけど。』

「なら最初からそう言って下さい。」 


私の周りには、私を馬鹿にすることしかできない人間しかいないのかと、ことごとく思い知らされる。 


『6件とも原産地証明必要だから。あと』

「放射線検査証明ですね。シッピングもこっちで作ります?」

『よろしく。今からPDFでインボイスとパッキングリスト送るから。』

「お願いします。あとシップバックの要因も」

『6件とも同じ会社の梅干なんだけど、向こうの税関検査で塩分濃度が2%高くて引っかかったんだよ。今先方に規格書訂正してもらってる。あー、要因書も先方に貰わないと。』


優しくはないけれど、優秀でかっこいいと謳われている朋政先輩は、社内広報誌や会社案内、ホームページにも掲載されるほどの逸材だ。

そんな雲の上の人が、私を好きだというのだから、六神のいう悪天候も頷けてしまう。


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