Un BUTTER
「うっわ、なんだそれ。」
「は?」
「首まで真っ赤。」
「え、うそ……!」
思わず自分の首を手で触って確かめる。でも自分の熱は自分じゃ計れやしない。
窓に映る自分を見ても、緊張のあまり視界がぼやけてよく分からなかった。
「……相手が相手だけに、虚勢だけじゃ返り討ちにあうな。」
意味不明なことをいう六神に、ようやく自分の感情が沸々と音を立て始めた。
「むかつく。」
「………」
何がむかつくのかと言えば、そりゃあ並べたら東京ドームが埋まるくらいにむかつくのだ。
「散々人を小馬鹿にして、勝手に人を誘っといて!」
「……小馬鹿?」
「言ったじゃん!!悔しかったらド清純になってみって!」
「……あー?」
っなんだそのカスみたいな反応。
「タクシーで連行されて、無理矢理西口プロレスやらされて!!」
「西口…?」
「好きなだけ煽っといて、結局彼女の電話が大事でさー!」
人がいないとはいえ、会社で何言ってんだと自分に言い聞かせても、私の口はとどまる所を知らなかった。
「そんなに私が嫌い?!」
「………」
「ねえ、そうやって弄んでつき放して、そんなに嫌いならもう私に関わらなければいいじゃん!!」
「………」
「ほらすぐそうやってだんまり!」
土日、どれだけ連絡を待ち望んでも寄こさなかったくせに。
私が玄関出て行った時だって、すぐに走って追いかけてこなかったくせに。
ねえ、なんで、
なんでそれでも私はあんたのことが好きなの?!
「ふざけんな!」
なんで私、六神の顔見れて嬉しいとか思ってんの?!
なんでなんで、私じゃ駄目なの?
ねえ六神、私がいいって。―――言ってくれないの?
無理矢理力を入れた拳で六神を払いのけて、来た道を進む。
さっきまで関わらない選択肢なんてないと思っていたけれど、今になってようやく学んだ。
離れないと、また私が勝手に沼っていくだけじゃん。
好きだけど断ち切らなきゃ
好きだけど嫌いにならなきゃ
一刻も早く朋政先輩を好きにならなきゃ
最初からこうしてつき放してればこんな思いなんてしなかった。
別れた時にしつこくより戻そうってお互い詰め寄ってたら、今頃私たち―――だなんて。考えることもなかった。
「嫌いじゃない。」
後ろから引き留めようとする、抑揚のない声。
そんな否定か肯定かも分からないような言葉で立ち止まるほど、安い女にはなりたくない。
「お前と絶縁したくないから関わりにきた。」
早く歩いてるつもりなのに、なんでかな。
あんたの声がこんなに近くで聞こえるの。
「なあ、待てって。」
ついには肩を触られて、私はそれをはね退ける。
「ふざけんな!は、こっちのセリフだし、」
私を煽ろうったってそうはいかない。
言い返してなんかやんないんだから。