ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
*
「聞いてませんね」
冷静な声がフロアに響き渡ると同時、上司の瞳に剣呑な色が落ちる。
据わりきった目を直視できなくなった私は、背筋を凍らせ、視線をそろりと彼の喉元へ定めた。
「しかも今夜? 時間がなさすぎる」
「も、申し訳ありません。てっきり、事情については社長からご連絡を受けてらっしゃるものとばかり」
「いえ、僕はなにも。親戚の不幸という件も初耳です」
……もしかして、すべて社長がしかけた罠なのか。
なぜ、と疑問が浮かんだところで、社長室を出る間際にかけられた言葉を思い出した。とはいえ、そんなことのためにだなんて、冗談にしては手が込みすぎている。
そこまで考えが巡ったそのとき、グシャッと不穏な音がした。
はっと顔を上げると、目を据わらせたきりの沓澤代理が、口角だけ上げた状態で招待状を握り潰している。本人は笑っているつもりなのかもしれないけれど、怖すぎて変な声が出そうになった。
「か、重ね重ね、申し訳ありませ……」
「いや、那須野さんはむしろ巻き込まれた側でしょう。謝らないでください」
「聞いてませんね」
冷静な声がフロアに響き渡ると同時、上司の瞳に剣呑な色が落ちる。
据わりきった目を直視できなくなった私は、背筋を凍らせ、視線をそろりと彼の喉元へ定めた。
「しかも今夜? 時間がなさすぎる」
「も、申し訳ありません。てっきり、事情については社長からご連絡を受けてらっしゃるものとばかり」
「いえ、僕はなにも。親戚の不幸という件も初耳です」
……もしかして、すべて社長がしかけた罠なのか。
なぜ、と疑問が浮かんだところで、社長室を出る間際にかけられた言葉を思い出した。とはいえ、そんなことのためにだなんて、冗談にしては手が込みすぎている。
そこまで考えが巡ったそのとき、グシャッと不穏な音がした。
はっと顔を上げると、目を据わらせたきりの沓澤代理が、口角だけ上げた状態で招待状を握り潰している。本人は笑っているつもりなのかもしれないけれど、怖すぎて変な声が出そうになった。
「か、重ね重ね、申し訳ありませ……」
「いや、那須野さんはむしろ巻き込まれた側でしょう。謝らないでください」