ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
ふたりきりになったときだけ砕ける口調を聞き入れ、どうしてか私はほっとする。
手早くカーナビを操作しながら、沓澤代理は眉を寄せてぶつぶつ呟き始めた。
「長谷川商事さんの創立記念か……ドレスだと大袈裟かな、社員としてってことならスーツだろうな。あんたスーツって持ってる?」
「はい。リクルートスーツなら自宅に」
「ふーん。どうせ真っ黒いやつだろ、イモみてえなよ……新調してもらうか」
「イモ!? し、失礼な、いやその通りですけど!」
「ほら見ろ」
目を合わせた状態で露骨に溜息をつかれ、私は思わず唸ってしまう。
なぜいかにも新人っぽい真っ黒いものだと分かるのか。新調したいと常々思っていたのは事実だけれど、このタイミングでは金銭的につらい。
そんな不安が顔に出ていたらしい。沓澤代理は、今度は正面を向いたままで「後で社長に請求してやる」と口元を歪めている。
私を使って仕返しを企むのはやめてほしい。
心の声を実際に零すことは堪え、はぁ、と吐息交じりの返事をするに留める。
「規模は大してデカくないし、あんたには社員として参加してもらうわけだからな。まぁでも、いかにも新人です~みたいな格好よりは華やかな感じにしてもらおうか。はは、女は大変だな」
手早くカーナビを操作しながら、沓澤代理は眉を寄せてぶつぶつ呟き始めた。
「長谷川商事さんの創立記念か……ドレスだと大袈裟かな、社員としてってことならスーツだろうな。あんたスーツって持ってる?」
「はい。リクルートスーツなら自宅に」
「ふーん。どうせ真っ黒いやつだろ、イモみてえなよ……新調してもらうか」
「イモ!? し、失礼な、いやその通りですけど!」
「ほら見ろ」
目を合わせた状態で露骨に溜息をつかれ、私は思わず唸ってしまう。
なぜいかにも新人っぽい真っ黒いものだと分かるのか。新調したいと常々思っていたのは事実だけれど、このタイミングでは金銭的につらい。
そんな不安が顔に出ていたらしい。沓澤代理は、今度は正面を向いたままで「後で社長に請求してやる」と口元を歪めている。
私を使って仕返しを企むのはやめてほしい。
心の声を実際に零すことは堪え、はぁ、と吐息交じりの返事をするに留める。
「規模は大してデカくないし、あんたには社員として参加してもらうわけだからな。まぁでも、いかにも新人です~みたいな格好よりは華やかな感じにしてもらおうか。はは、女は大変だな」