ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
言いながら唇が震える。
怯えではない。怒りとも違う。ただ、弁解しなければならないと、菅野さんが一方的に抱いている誤解を解かねばならないと、そのためだけに口を動かして、でも。
続く言葉は、声にはできなかった。
強く引かれた腕に気を取られ、私は思わずあ、と声を漏らす。
痛みを感じるほどきつく私の腕を握り締める手を、腕を、肩を、ゆっくりと視線で辿っていく。
「余計なことを吹き込むのはやめてくれ、杏奈」
低い声の主は、すこぶる機嫌が悪そうだった。
肩の先に視線を上げると、やはり不機嫌そうに眉を寄せる沓澤代理の顔があった。ついさっきまで遠巻きに眺めていた爽やかな笑顔はすっかりなりを潜め、別人のような振る舞いで菅野さんを睨みつけている。
菅野さんは、敵意に満ちた沓澤代理の態度に少しも動じた素振りを見せず、艶やかに笑んでみせた。
「久しぶりね、奏。すごい顔よ、なに? 別になんでもないわ、ちょっと話してただけよね?」
「……はい」
誘導じみた口調に逆らっていいのかまたも私は迷い、結局、掠れた声で同意を告げる。
怯えではない。怒りとも違う。ただ、弁解しなければならないと、菅野さんが一方的に抱いている誤解を解かねばならないと、そのためだけに口を動かして、でも。
続く言葉は、声にはできなかった。
強く引かれた腕に気を取られ、私は思わずあ、と声を漏らす。
痛みを感じるほどきつく私の腕を握り締める手を、腕を、肩を、ゆっくりと視線で辿っていく。
「余計なことを吹き込むのはやめてくれ、杏奈」
低い声の主は、すこぶる機嫌が悪そうだった。
肩の先に視線を上げると、やはり不機嫌そうに眉を寄せる沓澤代理の顔があった。ついさっきまで遠巻きに眺めていた爽やかな笑顔はすっかりなりを潜め、別人のような振る舞いで菅野さんを睨みつけている。
菅野さんは、敵意に満ちた沓澤代理の態度に少しも動じた素振りを見せず、艶やかに笑んでみせた。
「久しぶりね、奏。すごい顔よ、なに? 別になんでもないわ、ちょっと話してただけよね?」
「……はい」
誘導じみた口調に逆らっていいのかまたも私は迷い、結局、掠れた声で同意を告げる。