ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 むしろ、参っていた。

 雄平には、私の別れの切り出し方が唐突に見えたのだろう。私としては、いろいろと積もり積もったものがあった結果の決断だから、唐突もなにもない。
 かといって、積もり積もったものをひとつずつ述べろと言われたとして、すぐには挙げられそうになかった。挙げるためにわざわざひとつひとつ思い出すのも精神的に苦しい。だから早く話を終わらせてしまいたいのに、雄平はなかなか引かない。

 特筆するような魅力なんて自分にはない。分かっているから、なおさらつらい。
 雄平は軽い感じで例の言葉を口にした。私が傷つくかも、とは考えすらしていない様子だった。今このときになっても同じだ。それがまた悲しい。

 押し問答そのものに追い詰められつつあった、そのときだった。

「いつまで続くの、その話? そこ使いたいんだけど」

 不意に声がかかり、思わず肩が震えた。
 私を給湯室から逃がさないように出入り口側に立ち塞がっていた雄平も、はっとした顔で背後を振り返る。

 視線を上げた先には、沓澤代理が立っていた。

 腕時計へ視線を走らせた彼は、普段とは打って変わって苛立たしげで、見慣れないその態度に血の気が一気に引いていく。
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