ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
どうしてこの人が知っているんだろう、私と雄平の事情なんて。
沓澤代理からプライベートに踏み込まれたのは、これが初めてだった。
仕事中の姿からは想像がつかない、かなり砕けた喋り方だ。上司と同じ顔をした別人なのでは、と馬鹿げた考えが脳裏を過ぎっていく。
「ええと……あの」
「ああ、無理に答えなくていい。実は俺、那須野さんに折り入って頼みがあるんだ」
聞き慣れない口調で喋りながら、沓澤代理は徐々に距離を詰めてくる。
背後にはもう壁しかない。元々が控えめなサイズの食器棚とシンクしかない、狭い給湯室だ。逃げ場があるはずもなく、私はこくりと喉を鳴らす。
上司とイケない展開、などという妄想は一切膨らまなかった。
果歩なら、この状況にあってもそういうことをノリノリで考えそうだ。けれど、残念ながら今の私の中では、色っぽい展開うんぬんよりも不可解さのほうが遥かに勝っている。
「な、なんでしょうか……ひっ」
食器棚に上半身をもたれさせた沓澤代理の、無駄に隙のない仕種に、思わず妙な声が出てしまう。
こ、これは……海外版の壁ドン。
果歩が前に話していた〝メロシチュ〟だ。
沓澤代理からプライベートに踏み込まれたのは、これが初めてだった。
仕事中の姿からは想像がつかない、かなり砕けた喋り方だ。上司と同じ顔をした別人なのでは、と馬鹿げた考えが脳裏を過ぎっていく。
「ええと……あの」
「ああ、無理に答えなくていい。実は俺、那須野さんに折り入って頼みがあるんだ」
聞き慣れない口調で喋りながら、沓澤代理は徐々に距離を詰めてくる。
背後にはもう壁しかない。元々が控えめなサイズの食器棚とシンクしかない、狭い給湯室だ。逃げ場があるはずもなく、私はこくりと喉を鳴らす。
上司とイケない展開、などという妄想は一切膨らまなかった。
果歩なら、この状況にあってもそういうことをノリノリで考えそうだ。けれど、残念ながら今の私の中では、色っぽい展開うんぬんよりも不可解さのほうが遥かに勝っている。
「な、なんでしょうか……ひっ」
食器棚に上半身をもたれさせた沓澤代理の、無駄に隙のない仕種に、思わず妙な声が出てしまう。
こ、これは……海外版の壁ドン。
果歩が前に話していた〝メロシチュ〟だ。