ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「そんなこと言われて傷つかない奴がいるって本気で思ってたんなら、相当の馬鹿だろ。しかも人前でなんて」
「……そう、ですかね」

 不機嫌そうに寄せられた眉がミラー越しに覗き、息が詰まる。
 フォローの言葉だと、私を擁護してくれているのだと、頭では分かっているのに思考は他のところへ辿り着く。

 菅野さんも、そういうことを言われたら傷つくタイプの人だったのかな。
 ……ああ、私、卑屈だ。重くて厄介な勘違い女に、今ならなれてしまいそう。

「まだ好きなの? そいつのこと」
「えっ? いえ、それはないです。本当に冷めてしまったので」

 すぐ返したけれど、その後は話が続かなかった。
 変わらず不機嫌そうな顔でハンドルを握る彼が、ここまで機嫌を拗らせている理由はなんだ。なにを考えても勘違いじみた答えにしか辿り着けず、そんな自分にこそうんざりする。

「……あんたは」
「はい?」
「いや。なんでもない」

 沈黙が落ちた車内は、涼しくなってすら感じられた。つい今さっきまでふたり揃って笑い声をあげていたそれと同じ場所とは、とても思えないほど。
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