ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 気づけば、車は自宅アパート近くの交差点に差しかかっていた。
 急に心が冷えて、鼻の奥がつんと痛んだ気がして、そうこうしているうちに車の動きは完全に止まってしまった。

 もっと一緒にいたいと思っては、それを悟られては、駄目だ。

 帰らないと。
 車を降りて、さよならって、笑って言うんだ。早く。
 感情を半ば無視して隣へ向き直り、口を開こうとした瞬間、腕を引かれた。

 決して強引ではないその動きに、それでも余裕が枯渇した私の身体は簡単に傾ぐ。
 そっと背中に触れた手のひらの感触を理解して、それでようやく自分が抱き締められているのだと思い至る。

「……那須野」
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