ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「真面目、実直、それと派手なことが好きじゃない。だいたい合ってるな?」
「は、はあ? はあ」

 目を細めた薄い微笑みには見覚えがあった。
 見覚えどころか、普段から見慣れている彼の標準的な微笑みだ。それが本当に単なる営業スマイルだったのだと、私は心底思い知る。
 イケメンに壁ドンされたからといって、ドキドキするばかりではないらしい。いや、ドキドキはしているけれど、このドキドキはその手のドキドキではない。ときめきなんて露ほどもない、ただ単に心臓に悪いだけのドキドキだ。

 ……それにしても、よく見ているものだなと感心してしまう。
 真面目とか実直とか、そういう自覚はあまりない。よく分からないというのが本音だ。でも、派手なことは確かにあまり好きではない。

 地味な素顔を飾るためにメイクは基本きっちりするし、オフィスカジュアルとはいっても顔に合わせて服装を決めるから、そこそこ華やかな印象を与えがちだという自覚はある。けれど、不意にそれを窮屈に感じることもある。
 息が詰まる感じ。そういうものも、すでにバレているのか。会社でしか顔を合わせないこの人に。

 伊達に役職など務めていない、ということか。
 わずかであろうと、表に出した覚えのない内面を見破られていることに、得体の知れない焦燥を覚える。
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