ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
     *


 嫌なことは立て続けにやってくる。
 これまでの経験上、だいたいそうだった。今回も早々に覚悟を決めておくべきだったのかもしれないけれど、弱りきった隙だらけの私には、まともな自衛なんてすぐには取れそうになかった。

 翌朝。
 メッセージの到着を知らせる点滅が煩わしくて、朝から端末を目にしていない。沓澤課長だったらどうしようと思う。同時に、それが他の誰かからだったとして、沓澤課長ではなかったからという理由で気分が沈むのも憂鬱だった。

 出社して、顔を合わせて、挨拶をして、職務にあたる。沓澤課長の顔は極力見ないよう努めた。
 話しかけられる隙を作ってはならないと、そればかりで頭をいっぱいにしてノートパソコンへ向かう。そんな状態だから、これまでにないほど大きなミスをしでかしていそうで怖かった。

 昼の休憩はひとりで過ごした。
 果歩から声をかけられていたものの、今日は断った。もし今、沓澤課長に関する話題を持ちかけられてしまったら、午後からまともに仕事ができなくなりそうな気がしていた。

 社内に留まっていたくなかったから外出した。
 そして戻ってすぐ、ロッカールームにバッグを置きに向かったとき、不意にその声は聞こえてきた。
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