ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「……ああ、営業の……那須野?だっけ?」
「そう、その子。小山と別れてすぐだったからさ、結構ビビった」
「スゲェよな。結局顔で選ぶんだな……ああ、顔だけってわけじゃないか」
「な、次期社長様だもんな。そりゃあ一般人じゃ敵わねえさ、小山もかわいそうになぁ」
……丸聞こえ、なんだけど。
女子ロッカールームの傍。碌に潜められていない声で続く男性社員同士の会話が、ただでさえ疲弊しきった私の頭の中でぐるぐると渦を巻く。
女性からの疎ましげな視線には、少しずつとはいえ耐性がついてきていた。けれど、まさか男性陣からもその手の悪意を向けられているなんて思いもしなかった。
そうか。
周囲から見たら、私は雄平を切り捨てた悪女か。
立ち尽くしたきり動かずにいたのが悪かったらしい。男子ロッカールームから出てきたふたりの男性と、ばっちり目が合った。
見るからに〝ヤバい〟と言いたげな顔を晒したふたりを背に、私は慌てて踵を返す。
なにも言い返せそうになかった。言い返す勇気も気力も残っていない。ただ逃げたかった。その場に留まっていたくなかった。
「そう、その子。小山と別れてすぐだったからさ、結構ビビった」
「スゲェよな。結局顔で選ぶんだな……ああ、顔だけってわけじゃないか」
「な、次期社長様だもんな。そりゃあ一般人じゃ敵わねえさ、小山もかわいそうになぁ」
……丸聞こえ、なんだけど。
女子ロッカールームの傍。碌に潜められていない声で続く男性社員同士の会話が、ただでさえ疲弊しきった私の頭の中でぐるぐると渦を巻く。
女性からの疎ましげな視線には、少しずつとはいえ耐性がついてきていた。けれど、まさか男性陣からもその手の悪意を向けられているなんて思いもしなかった。
そうか。
周囲から見たら、私は雄平を切り捨てた悪女か。
立ち尽くしたきり動かずにいたのが悪かったらしい。男子ロッカールームから出てきたふたりの男性と、ばっちり目が合った。
見るからに〝ヤバい〟と言いたげな顔を晒したふたりを背に、私は慌てて踵を返す。
なにも言い返せそうになかった。言い返す勇気も気力も残っていない。ただ逃げたかった。その場に留まっていたくなかった。