ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 吐き出すように口にした。
 今日陰口を叩かれているところに遭遇したことや、今まで果歩に伝えるのをためらい続けてきた総務課のふたりの女性社員のことも、とうとう口に乗せてしまう。

 途中から嗚咽交じりになった。それでも果歩は私を止めも咎めもせず、黙って話を聞いてくれていた。
 総務課のふたりの話にも、果歩は特別驚かなかった。『誰のことも恨みやすい人たちなの、私だってあの人たちとは仕事以外の話なんてしないよ』と告げる果歩の声には、ほんの少し呆れが滲んでいた。

『ねぇゆず。もしかしてそれ、あたしのこと気にして黙ってた?』
「だ、だって」
『んもー! ゆずはもっと自分を大事にしなよ!』

 堪りかねたように叫ぶ果歩へ、ごめん、と咄嗟に返す。
 電話越しに露骨な溜息をついた果歩は、あのさ、と続ける。果歩が困っているときの声音だった。

『ゆずって案外打たれ弱いじゃん。そのくせに人の心配ばっかりする。あたしはね、ゆずはそのままでいいんだと思う』
「……果歩」
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