ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
『無理に強くならなくても傷つきやすくても、ゆずはゆずだよ。それでいいんだけど、自分の気持ちを押し殺してばっかりなのは駄目じゃない?』
「っ、でも」

 だって。でも。そればっかりだ。
 ぼたりと大粒の涙が落ちる。ルームウェアの膝を控えめに濡らしたそれが目に留まり、なんだか最近泣いてばかりだなと改めて思う。
 そうしたら、滑り落ちるようにして本音が零れた。

「私、沓澤課長のこと、好きなの」
『……ゆず』
「沓澤課長、優しくて、すぐ勘違いしそうになっちゃう。私、そういう勘違い、しなそうだから選ばれたってだけなのに」

 一度決壊した堤防は、本来の役目を果たせなくなる。
 後はぼろぼろに崩れ落ちていくのみだ。怒涛のごとく流れ出る本心に、歯止めをかけることなんてもうできない。

 どうして、もっと早く果歩に相談しなかったんだろう。
 誰にも相談せずにひとりで抱え続け、その結果がこれだ。まだ大丈夫、誰かに迷惑をかけられない、それを優先したために、大切な同期に――親友にこれほど心を砕かせてしまっている。
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