ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 笑って「うん」と返事をする。

 沓澤課長からの恋人役の提案を引き受けてから、数ヶ月が経った。
 いや、数ヶ月しか経っていない。それなのに、今の私は――私の気持ちが向かう先は、あの頃とは完全に違っている。

『明日から、また笑って仕事しよ? 待ってるから』
「うん。ありがと、果歩」

 ばいばい、と笑って通話を終える。溜息はもう出なかった。
 そう、明日も仕事だ。泣き顔を晒している場合ではない。特に、今日あれほど心配をかけてしまった三浦さんには、明日の朝こそは笑って挨拶したかった。

 まずは目を冷やそうと、私はタオルを取りに洗面所へ向かった。
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