ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
行き先は給湯室だった。
雄平に言い寄られていたところを、不本意ながらもこの人に助けてもらった場所――せいぜい数ヶ月前のそのできごとが、遥か昔のことのように思えてくる。
「あの。用件はなんでしょうか」
これほど不機嫌にさせること、私、なにかしただろうか。
プライベートな件でとなれば、呼び出しの理由はきっとそう多くない。おとといの残業時、私の言動のなにかが気に入らなかったということかもしれなかった。
こくりと喉が鳴る。その音のせいで、落ちた沈黙の深さがより際立つ。
真正面から向かい合うのは避けたい。わずかに視線を落とし、ネクタイの結び目辺りをぼんやりと見つめていると、沓澤課長が静かに口を開いた。
「単刀直入に言う。婚約してほしい」
一瞬、目の前が白く霞み、くらりと揺れた。
その正体が眩暈だと思い至ったのは、一拍置いた後。
雄平に言い寄られていたところを、不本意ながらもこの人に助けてもらった場所――せいぜい数ヶ月前のそのできごとが、遥か昔のことのように思えてくる。
「あの。用件はなんでしょうか」
これほど不機嫌にさせること、私、なにかしただろうか。
プライベートな件でとなれば、呼び出しの理由はきっとそう多くない。おとといの残業時、私の言動のなにかが気に入らなかったということかもしれなかった。
こくりと喉が鳴る。その音のせいで、落ちた沈黙の深さがより際立つ。
真正面から向かい合うのは避けたい。わずかに視線を落とし、ネクタイの結び目辺りをぼんやりと見つめていると、沓澤課長が静かに口を開いた。
「単刀直入に言う。婚約してほしい」
一瞬、目の前が白く霞み、くらりと揺れた。
その正体が眩暈だと思い至ったのは、一拍置いた後。