ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「余計なお世話なのは分かってるんだけど。沓澤さんってさ、那須野さんにベタ惚れなんだよね。知らなかった?」
「私は……そういう係を頼まれただけです」
「本気で言ってる?」
責める口調ではない。むしろ気遣いを感じた。
それでも、今の私はその話題にまともな返事ができる心理状態にはない。立ったままでマグカップを持ち直しては所在なく視線を彷徨わせる私へ、三浦さんは困ったように笑いかけた。
沓澤さん。三浦さんが使った親しげな呼称に、沓澤課長の声が蘇る。
『ちょっと困惑だよな』
出張を機に三浦さんと仲良くなった、という話を聞いたのはいつだったか。確か木乃田店に向かった帰り道だ。
デートのような休日を彼と一緒に過ごしてしまったあの日の、別れ際の遠慮がちな抱擁――そこまで考えが至ったところで、私は無理やり記憶の再生を止めた。今考えるべきことでは、ない。
鼻の奥がつんと痛む。
枯れきったと思っていた涙は、どうやらまだ残っていたらしい。
「普通はあんなのコロッと落ちても誰も責めないよ? 那須野さんはなんでそこまで頑ななの? 沓澤さんのこと、嫌い?」
「私は……そういう係を頼まれただけです」
「本気で言ってる?」
責める口調ではない。むしろ気遣いを感じた。
それでも、今の私はその話題にまともな返事ができる心理状態にはない。立ったままでマグカップを持ち直しては所在なく視線を彷徨わせる私へ、三浦さんは困ったように笑いかけた。
沓澤さん。三浦さんが使った親しげな呼称に、沓澤課長の声が蘇る。
『ちょっと困惑だよな』
出張を機に三浦さんと仲良くなった、という話を聞いたのはいつだったか。確か木乃田店に向かった帰り道だ。
デートのような休日を彼と一緒に過ごしてしまったあの日の、別れ際の遠慮がちな抱擁――そこまで考えが至ったところで、私は無理やり記憶の再生を止めた。今考えるべきことでは、ない。
鼻の奥がつんと痛む。
枯れきったと思っていた涙は、どうやらまだ残っていたらしい。
「普通はあんなのコロッと落ちても誰も責めないよ? 那須野さんはなんでそこまで頑ななの? 沓澤さんのこと、嫌い?」