ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 握り拳を作って笑ってみせる三浦さんにつられて、私もつい笑ってしまう。
 気遣い上手な人だ。こうやってわざと私を笑わせることで、デスクに戻りやすくしてくれているのかも……というのは、さすがに深読みのしすぎだろうか。

「あはは、冗談。けど真面目な話、一度ちゃんと話し合ってみたほうがいいよ」
「……三浦さん」
「沓澤さん、隠してるつもりなんだろうけどあからさまに落ち込んでてさ。正直言うとちょっとウザいんだ」
「ウザ、い……?」
「あ、本人には言うなよ?」

 焦りが滲んだ口調と態度を前に、思わず噴き出してしまう。
 決まりが悪そうな顔で苦笑した三浦さんは、先に戻るようにと、首でフロアの方角を指し示している。
 使用済みの急須とマグカップをちらりと見やったけれど、首を横に振られてしまったために、私は甘えて先にその場を後にする。

「三浦さん。あの、ありがとうございます」
「どういたしまして。ちゃんと話、してね」

 急須とカップの件についてか、話を聞いてくれたことについてか、お礼の理由はあえて伝えなかった。それから、彼の返事へは曖昧に笑い返すだけに留める。
 そのまま、私は踵を返して給湯室を後にした。
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