ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
*
午後六時。
連絡は、まだ来ない。
午後、途中から沓澤課長は席にいなかった。
彼のデスクを眺める限りでは、まだ帰社していないらしい。外せない用が入ったのかもしれないけれど、もやもやした気分になる。
一旦帰り、連絡が来てからもう一度外出しようかと思う。残務も所用もないのにいつまでも職場に残っているのは、なかなかに居心地が悪い。
ロッカールームで、沓澤課長に『一旦帰ります』とメッセージを入れる。少々待ってみた程度では既読表示は現れず、やはり忙しいのかもしれないと諦めた。でも。
エントランスを抜け、外に一歩足を踏み出したところで、不意に背後から声がかかった。
「ゆず」
期待していた声ではなかった。
むしろ、できれば今後も私への接触を避けていてほしかった人の声だった。
無視して去るわけにもいかず、私は憂鬱な気分で後ろへ向き直る。
「久しぶり。今帰り?」
「……うん」
声の主は雄平だった。
ぼうっとしていたせいか、「少し話せないか」と語る彼の声はどこか遠い。しかも言っている内容が沓澤課長のメッセージとものの見事に重なり、私は狐につままれたような気分になる。
午後六時。
連絡は、まだ来ない。
午後、途中から沓澤課長は席にいなかった。
彼のデスクを眺める限りでは、まだ帰社していないらしい。外せない用が入ったのかもしれないけれど、もやもやした気分になる。
一旦帰り、連絡が来てからもう一度外出しようかと思う。残務も所用もないのにいつまでも職場に残っているのは、なかなかに居心地が悪い。
ロッカールームで、沓澤課長に『一旦帰ります』とメッセージを入れる。少々待ってみた程度では既読表示は現れず、やはり忙しいのかもしれないと諦めた。でも。
エントランスを抜け、外に一歩足を踏み出したところで、不意に背後から声がかかった。
「ゆず」
期待していた声ではなかった。
むしろ、できれば今後も私への接触を避けていてほしかった人の声だった。
無視して去るわけにもいかず、私は憂鬱な気分で後ろへ向き直る。
「久しぶり。今帰り?」
「……うん」
声の主は雄平だった。
ぼうっとしていたせいか、「少し話せないか」と語る彼の声はどこか遠い。しかも言っている内容が沓澤課長のメッセージとものの見事に重なり、私は狐につままれたような気分になる。