ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 口を半端に開いたきり、声を出せなくなっている。雄平はそんな顔をしていた。
 対する自分はどんな顔をしているだろう。この人に見せたことがない顔で怒っているに違いなかった。

「ゆず、変わったんだな。沓澤さんの影響?」

 雄平の口調から一向に消えない沓澤課長に対する嘲りが、ますます私の神経を逆撫でする。

 変わった、ってなんだよ。
 私のなにを知っていて、それからどこが変わったのか、説明してみてよ――そう声を荒らげたくなる。

 けれど私だってきっと同じだ。
 この人のなにが好きだったか、今ではもう分からない。言葉にして表すことはできそうになくて、愕然とする。

 私も上辺で恋をしていた。
 人の上辺を眺めて、自分も上辺で愛されたがって、それだけ。
 だから失望してしまう。今の雄平にも、自分自身にも。

「うん。そうかも」
「でも別に沓澤さんとは付き合ってないんだろ、じゃあなんで……っ」
「もうやめよう。同じこと、繰り返したくない」

 私がどれほど傷ついたのか、雄平は今も分かっていない。だからまっすぐ目を見て言う。
 怯んだ様子が伝わってきて、まるで私こそが悪いことをしているような錯覚に陥りそうになって、それでも口を閉ざしたくはなかった。
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