ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 きつく拘束されているのにどこか遠慮がちな抱擁には、覚えがあった。
 木乃田からの帰り道、車の中。あの日も同じように触れられた。らしくないその仕種は鮮明に記憶に焼きついていて、私は思わず腕を伸ばして広い背に触れる。

 びくりと露骨に震えたそこへ、今度はもう片方の腕を伸ばして抱き締めた。

「俺に会いたかった?」

 こくりと頷いた。
 淡く笑う息が耳を掠める。同時に、あれほど枯渇しているように見えた余裕が戻ってきている印象を受け、恥ずかしさとともに安堵も覚える。

「いっつも同じ場所で働いてんのに?」

 再び頷くと、抱擁がきつくなった。首筋をなぞる彼の指は相変わらず熱い。さらに熱を上げている気すらした。そのくせ、どこかまだ遠慮が残っている。
 この人がなぞるのは、いつだって同じ場所だ。
 上塗りでもするように触れる。強い既視感が眩暈を生み、どこからどこまでが今実際に起きていることなのか意識ごと揺らぎそうになり、過ぎた酩酊感に頭が揺れる。

 雄平にはきちんと言えた。
 これまでは流されてばかりだった私自身の悪癖を、今なら脱ぎ捨てられる気がして、私は縋るように腕に力を込める。

「……私」
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