ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 彼はすぐに納得したらしく、へぇ、と声をあげた。

「簡単に想像つくな、バレー部とか」
「そうでしょうね。ちなみに女子にモテてましたね、男子には全然でしたけど」
「それもスムーズに想像できる」
「さりげに失礼ですよそれ」
「あ、いや、女子にっていう話のほう……」
「取ってつけたようなフォローをどうもありがとうございます」
「……んだよ、可愛くねえな」
「はいはい、申し訳ありません」
「はいはいってあんた……」

 流れるように喋っているうち、妙な緊張は消えていた。
 残り数行となったデータの移行を、会話の合間に終わらせてしまう。エンターキーをカツンと叩き、上司の目の前だということをすっかり忘れた私は、腕を上に高く伸ばして大きく伸びをした。

「終わりました! ありがとうございます、遅くまで手伝っていただいて」
「はいはいご苦労さん」
「はいはいって……別にいいですけど」
「さっきあんたも言ってただろ」

 こんなに砕けたやり取りは初めてだ。
 並んで帰路に就くときにも、この人を相手に今のような喋り方をしたことはない。しかも今は仕事中だ。
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