ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
沓澤代理は、私を使って、社内のみならず社外の人間まで牽制したいのかもしれない。
そういう事情は先に教えておいてくださいよ、私、一応当事者ですし……と、疲れた頭で思った。そろそろ心労で痩せそうだ。
「那須野さんはその辺、ちゃんと了承してるのかい?」
突如矛先を向けられ、私は弾かれたように顔を上げた。
温厚そうな社長の視線と私のそれがかち合い、私は曖昧に笑い返すしかできない。
はい、と声を絞り出すと、社長はその日初めて物憂げな吐息を零した。
なにか余計なことでも言ってしまったかと一瞬背筋が冷えたけれど、社長は私にではなく、息子である沓澤代理に対してそれを零したのだとすぐに思い至る。
「事情は分かった。先週、書類をお願いしたときは相当に動揺してたもんねぇ那須野さん……そのときからおかしいとは思ってたんだけど、そういう事情だったとはねぇ」
「あ……申し訳ありません。その、騙すような真似を」
反射的に口をついた謝罪の言葉に、社長は目を丸くした。
「えー、那須野さんが謝るところじゃないよ。むしろお前が那須野さんに謝りなさいよ、ほら」
「なんで」
「なんでって、迷惑かけてるだろう!」
「別にかけてない」
そういう事情は先に教えておいてくださいよ、私、一応当事者ですし……と、疲れた頭で思った。そろそろ心労で痩せそうだ。
「那須野さんはその辺、ちゃんと了承してるのかい?」
突如矛先を向けられ、私は弾かれたように顔を上げた。
温厚そうな社長の視線と私のそれがかち合い、私は曖昧に笑い返すしかできない。
はい、と声を絞り出すと、社長はその日初めて物憂げな吐息を零した。
なにか余計なことでも言ってしまったかと一瞬背筋が冷えたけれど、社長は私にではなく、息子である沓澤代理に対してそれを零したのだとすぐに思い至る。
「事情は分かった。先週、書類をお願いしたときは相当に動揺してたもんねぇ那須野さん……そのときからおかしいとは思ってたんだけど、そういう事情だったとはねぇ」
「あ……申し訳ありません。その、騙すような真似を」
反射的に口をついた謝罪の言葉に、社長は目を丸くした。
「えー、那須野さんが謝るところじゃないよ。むしろお前が那須野さんに謝りなさいよ、ほら」
「なんで」
「なんでって、迷惑かけてるだろう!」
「別にかけてない」