ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「いやいや、思いっきりかけてるよ。こんなに可愛らしいお嬢さん、わけの分からない理由のために独り占めして……お前のせいでいろいろ不便しててかわいそうじゃないか。彼氏も作れないだろうに」

 セクハラぎりぎり――いや、ほぼアウトな会話を目の前で繰り広げられ、さすがに居た堪れなくなる。
 社長が、沓澤代理ではなく私のお父さんのような発言を繰り出していることに、場違いにもうっかり笑ってしまいそうになった。

「僕はそんな話は聞いてないですね。どうですか、那須野さんは迷惑ですか?」
「えっあの、迷惑、と申しますか」
「いやいや、今ここではっきり『迷惑です』って那須野さんが言えるわけないでしょ、馬鹿なのお前?」

 社長、頑張って。ものすごく頼りにしています。
 表面的には冷静ながらも、激しい火花が散って見えそうな舌戦だ。全力で社長を応援したくなったところで、社長は深い溜息を落とした。

「嫌がらせなんかは受けてないのかい? 私の見間違いじゃなかったら、今朝もきなくさい場面があったみたいだけど」

 虚を突かれ、私は息を呑む。
 今朝の記憶が蘇る。特段気にすることでもないと無理に思い込んでいたことを思い出して、ずきりと胸が痛んだ。
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