ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
果歩と同じ、総務課の先輩社員だった。見覚えはあった。
睨みつけるように私を見ていた社員ともうひとりの社員、ふたりの女性。思いきって目を向けたときには、視線を逸らされてしまった後だった。
彼女たちとは直接の面識がないから、多分そういうことなのだと思う。
他にそんな目を向けられる理由がない。
「いいえ。大丈夫です」
絞り出した声は、無駄に掠れていた。
これではトラブルがあったと明言しているに等しい。頭を抱えたくなる。隣から沓澤代理の視線を感じたけれど、目を向ける気にはなれなかった。
「そうか。まぁなにかあったら全部、沓澤君のせいにすればいいと思うよ。君がつらい目に遭う必要はこれっぽっちもないからね」
「いえ、本当に大丈夫です。申し訳ありません、プライベートな話でお時間を割かせてしまって」
「いやいや、私が呼び出したんだからいいんだ。あと本当に、なにかあったらすべて沓澤君のせいに」
「那須野。行くぞ」
社長の言葉の途中で、沓澤代理は唐突に立ち上がり、私の腕を引いた。
ここまであからさまな接触は初めてだ。堪らず息を呑み、きっとそれは私たちを凝視している社長にも伝わった。
結局、退室する間際になんとか「失礼します」とだけ口に乗せ、そのまま社長室を後にする形になってしまった。
睨みつけるように私を見ていた社員ともうひとりの社員、ふたりの女性。思いきって目を向けたときには、視線を逸らされてしまった後だった。
彼女たちとは直接の面識がないから、多分そういうことなのだと思う。
他にそんな目を向けられる理由がない。
「いいえ。大丈夫です」
絞り出した声は、無駄に掠れていた。
これではトラブルがあったと明言しているに等しい。頭を抱えたくなる。隣から沓澤代理の視線を感じたけれど、目を向ける気にはなれなかった。
「そうか。まぁなにかあったら全部、沓澤君のせいにすればいいと思うよ。君がつらい目に遭う必要はこれっぽっちもないからね」
「いえ、本当に大丈夫です。申し訳ありません、プライベートな話でお時間を割かせてしまって」
「いやいや、私が呼び出したんだからいいんだ。あと本当に、なにかあったらすべて沓澤君のせいに」
「那須野。行くぞ」
社長の言葉の途中で、沓澤代理は唐突に立ち上がり、私の腕を引いた。
ここまであからさまな接触は初めてだ。堪らず息を呑み、きっとそれは私たちを凝視している社長にも伝わった。
結局、退室する間際になんとか「失礼します」とだけ口に乗せ、そのまま社長室を後にする形になってしまった。