ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
 わざと濁した。
 女性社員、それも複数の人物に睨みつけられたとはとても言えない。だいたいが、私の思い違いなのかもしれないのだから……けれど。

 社長の言葉は意外だった。あの一部始終を見られていたのか。もしかしたら、私があの場を訪れるよりも前から、社長は彼女たちを見かけていたのかもしれなかった。各部署にも頻繁に顔を出す彼のことだ、あり得ない話ではない。
 巡らせていた思考はしかし、苛立ったような沓澤代理の声に掻き消されてしまう。

「あのさ。そういうの、もっと早く教えてくんねえかな」
「あ……す、すみません」
「次、もし誰かになんかされたら絶対教えろ。だから」

 ――もう少し、今の関係を続けてほしい。

 続いた声は一転して弱々しかった。
 苛立ちが削げ落ちた、気分でも悪いのかと心配になってくるほどの、らしくない声だった。

 それ以上なにを考える間もなく、私はこくりと頷き返してしまう。
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