ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「ありがとう、助かった。あとはプレゼンの準備だけど、それはすぐできると思う」
「さすがですね。慣れてますもんね、会議」
「は? 嫌味かよ」
近頃では、残業時に丁寧な言葉を使われることはなくなった。
気安い口調で話す沓澤代理を知っている人が、部署内に――いや、社内にどれほどいるだろう。もしかしたら自分は希少な現場に立ち会っているのかもしれないと、うっかり口元が緩みそうになる。
沓澤代理も、短い期間とはいえ現場経験を積んでいる。入社して間もない頃、新設されたばかりの都心方面のアンテナショップに配属されていたらしい……と、いつだったか果歩から聞いた。
例えば、その頃一緒に仕事をしていた人たちは、彼のこういう一面を知っていただろうか。どことなく浮ついた気分が、私に無駄口を叩かせる。
「とんでもないです。昇進の話も聞きましたよ、おめでとうございます」
「……へぇ。まだ先の話なのによく知ってたな」
途端に、沓澤代理は表情を一変させた。
しまったと思ってももう遅い。苦々しくしかめられた顔を見て、浮かれかけていた私の気持ちは一気にしぼんでいく。
「さすがですね。慣れてますもんね、会議」
「は? 嫌味かよ」
近頃では、残業時に丁寧な言葉を使われることはなくなった。
気安い口調で話す沓澤代理を知っている人が、部署内に――いや、社内にどれほどいるだろう。もしかしたら自分は希少な現場に立ち会っているのかもしれないと、うっかり口元が緩みそうになる。
沓澤代理も、短い期間とはいえ現場経験を積んでいる。入社して間もない頃、新設されたばかりの都心方面のアンテナショップに配属されていたらしい……と、いつだったか果歩から聞いた。
例えば、その頃一緒に仕事をしていた人たちは、彼のこういう一面を知っていただろうか。どことなく浮ついた気分が、私に無駄口を叩かせる。
「とんでもないです。昇進の話も聞きましたよ、おめでとうございます」
「……へぇ。まだ先の話なのによく知ってたな」
途端に、沓澤代理は表情を一変させた。
しまったと思ってももう遅い。苦々しくしかめられた顔を見て、浮かれかけていた私の気持ちは一気にしぼんでいく。