ビタースイート・ドロップ~次期社長の甘い嘘~
「対等じゃない感じ、しちゃってさ。でも最初からそうだったのかも。仕事の話が好きな人だったけど、あたしの仕事の話は聞き流すことも多かったし」

 控えめに溜息をついた果歩は、カップを手に窓の外へ視線を投げる。
 つられて私も窓に目を向けたけれど、雨でずぶ濡れの窓は不明瞭な景観しか生み出せていない。歯がゆい気分になる。

「お前は新しい場所で仕事探せばいいじゃん、とか言われてさ。どこまで上から目線なのって呆れちゃった。あたしよりずっと大人だと思ってたのに、全然違ったみたい」
「……うん」
「気持ちだけじゃどうにもならないこと、いっぱいあるね。そのせいで結局気持ちまで離れちゃったりして、うまくいかなくなる」

 デザートのパイシューを崩す果歩のフォークが、ふと動きを止めた。
 くしゃくしゃのパイ生地の破片、その成れの果てがおしゃれなグラスからテーブルに零れ落ち、どうしてか私の胸こそじくじくと痛む。
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