ビター × スイート
(・・・最悪・・・!もう、恥ずかしすぎる・・・!)


いい年をして、なんてことをしてるのか・・・。

自分がどんな姿だったのか、想像すると、顔から火が噴き出しそうだし泣きそうだ。

駅員さんは、「まあまあ」となだめに入る。

「盗撮は未然に防げましたから。ほら、そのジャケット、四宮さんが、お客さんの足を隠すために膝元にかけてくれたんですよ」

言いながら、駅員さんは四宮さんが持っている紺の背広を指差した。

それを見て、私は「あっ!」と声を出す。

「ごめんなさい・・・!私、さっき立ち上がった時に下に落として・・・」

「別にいい。汚れてもなんともないし」

「でも」

「それより、酔いは醒めたのか。随分と飲んだようだが・・・。もう平気なら、タクシーで帰るか近くで泊まるところを探して寝るんだな。ここにいるのは迷惑になる」

四宮さんに睨まれて、私は勢いよく「はい!」と軍隊の如く返事する。

「まだつらい」なんて、言いにくすぎる状況だ。

「大丈夫です。すみません、ご迷惑をおかけしました・・・」

私はヨロヨロ立ち上がり、ホームの階段へと向かう。

と、すぐにふらついてしまい、駆け寄ってきた四宮さんに支えてもらった。

「っ、すみません!」

「無理だったらちゃんと言え。もう少し休んでいくか」

「い、いえ・・・、大丈夫です」

「・・・怪しいな。けど、ここにいるわけにもいかないからな。とりあえず、改札の外まで付き添うから」

そう言うと、四宮さんは私を支えながらエレベーターの前まで連れて行く。

ドアが開いて中へと乗り込むと、四宮さんは改札行きのボタンを押した。

ギュイーンという音を出し、エレベーターが下ってく。

初対面の警察官と2人きり。

四宮さんは、私をじろりと見下ろし問いかけた。

「君は、いつもこういうことをしてるのか」

「え」

「酔っぱらうほど酒飲んで、駅のホームで寝るってことだ」

「っ、いつもはしてません・・・!!」

全力で私は否定する。

・・・そう。

こんなに飲んで、酔って駅のホームで寝るなんて、生まれて初めてのことだった。
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