大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 お風呂から出ると、男女の出入口の前に浴衣姿の穂高が座って待っていた。

 胸元が少し開いた浴衣姿がやけに色っぽくて、思わず視線をそらしてしまう。

(普通は逆じゃない? なんで私がこんなにドキドキしてるの……)

 とは思うけれど、これは相手が悪い。

 穂高は私に気づくとすぐ立ち上がって、微笑むとそっと私の手を取った。

「千紘、すごく浴衣が似合う」
「穂高の方が似合ってるよ」
「ありがとう。……行こう」

 手から熱が伝わる。愛しい熱だ。

 別れるとき、私がこの手を離してしまった。
 もっと冷静に話していれば何か変わったかもしれないのに。

 この手を、もう二度と離したくない。離しちゃダメだ。
 そう思った私は彼の手を強く握り返した。

< 130 / 209 >

この作品をシェア

pagetop