大好きだった元彼と再会しましたが、私はもう結婚しています。

 淡々と告げると、匡輔は一瞬だけ口を閉ざした。そのあと、不自然に低い声で笑って言う。

「……悪かったって。そんな怒ってねぇよ。話だけでもさせろよ」
「……話だけなら、外のカフェで十分だよね。うちじゃなくて、外でいいね」

 本能が警鐘を鳴らし続けていた。二人きりは絶対にダメだ。

 元配偶者といえど、離婚成立後なら家に押しかけるのは軽度のストーカー事案として扱われることもあるからね。と、あかり先生には教えてもらっていた。
 警察に通報していいって。

 本当はもうそうしたい。
 だけど……彼の真の訪問理由が分からない限り、何度も同じことが繰り返されるのではないかと思った。

 匡輔は舌打ちしながらも、
「……じゃあいいよ。お前の奢りな」
 と吐き捨て、近くのカフェの名前を指定してきた。
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