辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
一連の神事が終わり、
デクランがファティマの手を取って
そっと自分の胸に寄せる。

「……ファティマ。
 君が来てから、僕の世界はこんなにも明るいんだ。
 君と生きる未来を、ずっと守りたい。」

人前で言うには大胆すぎるほど
真っ直ぐな言葉だった。
ファティマの胸が熱くなり、
視界が滲む。

「デクラン……私もよ。
 私を幸せにしてくれて、ありがとう。」

ふたりは波音に包まれながら、
静かに――深く口づけを交わした。

国民たちが一斉に白い花びらを海へ投げ入れ、
海面はまるで星のように光の粒で満たされていく。

列席した誰もが、
新郎新婦の幸せな姿に目を細め、
二人の未来を祝福していた。

ただ1名を除いては。
貴賓席の後方で
ビンセントは号泣していた。
「姉上ぇぇぇ、綺麗すぎる……あぁお嫁に行くなんてもったいない。デクラン頼むから生涯大事にしてくれぇぇぇ」と堂々と泣いていた。

隣で呆れ返るラジワ。
彼女の夫であるソラリス王国王太子も
皇帝の姿に唖然としている。

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