辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
デクランは深く礼をし、立ち上がった。
「フィロメナ王妃陛下。
あなたの勇気を必ず無駄にしません。
ファティマを――必ず連れて帰ります」

王妃は涙ぐみながら微笑む。
「あなたを信じています。
どうか……どうか姉上を……」

デクランは強くうなずき、部屋を後にした。

扉が閉まる瞬間、
フィロメナの小さな祈りが聞こえた。
「――姉上を、幸せにしてあげて……」
デクランの胸にその言葉が深く刺さった。

デクランは仲間を引き連れて、
オルランドが教えてくれた
ドラゴニア帝国方面へと伸びる水路に進入した。
地図を頼りに南へ南へと進んでいく。

胸の奥にあるのは不安と恐れ、
そして――
会いたい。
その気持ちがすべてを上回っていた。

「待っていてください、ファティマ。
あなたが笑って過ごせる場所に、必ず連れ帰る。」

夜風に揺れるランタンの炎が、
デクランの顔を照らしていた。
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