辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る
ドラゴニア帝国北部の国境都市――
乾いた風が吹き抜け、
石畳の広場には市民が集まっていた。
デクランはフードを深く被り、
旅人のふりをして雑踏に紛れていた。
オルランドから得た情報を頼りに、
この街で帝国の動きを探るつもりだったが、
思うように進展がなく焦りも募っていた。
(どうすれば……彼女の居場所に近づける?)
重苦しい空気を吸い込んだその時――
広場のざわめきがスッと変わった。
「……おい、皇女殿下がお出ましだ」
そんな声が耳に届いた。
(皇女殿下!?まさか――)
デクランは顔を上げる。
視線の先、馬車が止まり、
ゆっくりと扉が開く。
陽光の中に現れたのは、
薄紫のドレスに身を包んだファティマだった。
幾重にも重なる護衛の鎧がきらめき、
まるで鋼鉄の檻のように彼女を囲んでいる。
だがその隙間から見えた横顔――
凛とした姿勢、微笑みを浮かべながらも、
瞳の奥に強い疲れが滲んでいる。
(ファティマ……!)
胸の奥が焼けるように熱くなる。
隣の侍女に何かを囁かれ、
子どもに手を差し伸べるファティマ。
あの優しい仕草。
アズールティアでも、
子どもたちに向けられていた微笑み。
彼女はほんの数歩先にいる。
声をかければ、届く距離だ。
乾いた風が吹き抜け、
石畳の広場には市民が集まっていた。
デクランはフードを深く被り、
旅人のふりをして雑踏に紛れていた。
オルランドから得た情報を頼りに、
この街で帝国の動きを探るつもりだったが、
思うように進展がなく焦りも募っていた。
(どうすれば……彼女の居場所に近づける?)
重苦しい空気を吸い込んだその時――
広場のざわめきがスッと変わった。
「……おい、皇女殿下がお出ましだ」
そんな声が耳に届いた。
(皇女殿下!?まさか――)
デクランは顔を上げる。
視線の先、馬車が止まり、
ゆっくりと扉が開く。
陽光の中に現れたのは、
薄紫のドレスに身を包んだファティマだった。
幾重にも重なる護衛の鎧がきらめき、
まるで鋼鉄の檻のように彼女を囲んでいる。
だがその隙間から見えた横顔――
凛とした姿勢、微笑みを浮かべながらも、
瞳の奥に強い疲れが滲んでいる。
(ファティマ……!)
胸の奥が焼けるように熱くなる。
隣の侍女に何かを囁かれ、
子どもに手を差し伸べるファティマ。
あの優しい仕草。
アズールティアでも、
子どもたちに向けられていた微笑み。
彼女はほんの数歩先にいる。
声をかければ、届く距離だ。