私は死亡者
私は冷たいものが背中を撫でるのを感じた。

「遼はどこですか?」

看護師はおそるおそる答えた。

「地下のファイル室に向かいました。
“死亡診断書の原本を確認したい”と……」

死亡診断書。

私の“死”の記録。

沙耶と私は目を合わせた。

「行こう、美鈴」

エレベーターが地下へ降りていく間、不気味な静寂が続いた。

そして扉が開くと——
そこは異様なほど寒かった。

まるで“死者”しかいない空間に迷い込んだように。
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