百十一は思う。ある意味、難攻不落だと。
ダークロマンスとは名ばかりの
『越名。今度の休み、デートしよっか。』
真木先輩に、軽い感じで言われたからてっきり近場でショッピング程度だと思っていたのに。
車で連れて行かれた場所は、なんと温泉地でした。
「ど、ど、どど、どういことですか?! アウトレットモール見るんじゃなかったですか?!」
温泉街を前に、真木先輩をあわわと見上げる。なんとも爽やかな笑顔で、あははと返された。
「ごめんごめん! 越名を驚かそうと思って、実は一泊で宿予約しちゃったんだよね。」
「え、ええ?! どうしましょう! 驚きを隠せませんっ。」
「下着とか着替えとか、持ってきてないよね? 調達しながら温泉街でも回ろうか。」
「……は、はい。」
いくら土日とはいえ、さすがに予告なく一泊というのはハードルが高いのでは? しかも付き合って初めてのデートで旅行って。
「あの、すみません。私、これまでデートで遠出というものをしたことがなくって。」
「そうなの?」
「彼に合わせてなるべくお金を使わないようにしていたので。家で過ごすことが多かったんです。」
「はは。生活感に慣れすぎて、それで彼氏が浮気? 彼も越名を彼女っていうより、お母さんみたいに思っちゃったんだろうね。」
「たぶん、そうなんですよね。」
「彼は越名を引き止めておくのが下手だったんだろうね。女はいつだって女として扱わないとさ。」
たまに垣間見えてしまう、真木先輩の不誠実な発言。高校時代には感じたことのなかった、真木先輩の違和感。
それでも、私が真木先輩の心を掻き乱してしまった責任は負わないと。私が真木先輩の支えになれるよう、頑張らないと!
「越名、けっこう人多いからさ、手、つないどこっか。」
「は、はい!」
「あと裏通りは絶対に1人で行かないようにね。ここの地元、ガラが悪いって有名だから。」
「わ、わかりました!」
力強く繋がれた手から、真木先輩の人柄を感じる。いつだって責任感を持ってリーダーシップを切る先輩の背中を、必死に追いかけていたあの日。
でも今は、こうして隣で手を繋いでもらっている。私が迷子にならないように。カップルというより、保護者と子供のようだ。
「先輩見て下さい! 腎臓まんじゅうです! 腎臓の形したおまんじゅうが売っっています!」
「ちょっと越名、騒ぎすぎだって。」
「見て下さい! あっちは酒粕マキアートが売ってます! マキアート?! ちょっと私、買ってきますね!」
「あ、こら越名!」
お酒はあまり飲めないけれど、酒粕は嫌いじゃなかったりする。お父さんが好んで酒粕製品を食べていたからだ。
お母さんにもお土産を買っていきたいな。
私の母親は、亭主関白の父によく尽くす母親だったが、娘の私のフォローもしっかりしてくれていた。
私が父親に厳しいことを言われれば、必ず後から『大丈夫よ。お父さんは和果を心配して言っているだけだから。』とこっそり教えてくれた。
でもお父さんが死んでからというもの、お母さんは覇気を失くしてしまい、趣味を持つこともなく、毎日ぼーっと過ごすようになってしまった。
私に彼氏ができた時も、それこそ最近、婚約を破棄した時だって、なにも言わなかった。『あら、そう。』と、まるで私に無関心であるかのような態度だった。
多分、あれは鬱病の一種だと思う。一度病院に連れて行こうとしてみたけれど、『行きたくない』と拒否されてしまったのだ。
「腎臓まんじゅう四箱も買うの?!」
「はい。三つは会社用で、一つはお母さんへのお土産です。」
「そういえばお母さん、元気?」
「ええと、はい。元気ですよ!」
「そう、それならよかった。」
先輩がふわりと笑顔をみせる。先輩には心配はかけられまいと、母の詳細はふせた。
真木先輩に、軽い感じで言われたからてっきり近場でショッピング程度だと思っていたのに。
車で連れて行かれた場所は、なんと温泉地でした。
「ど、ど、どど、どういことですか?! アウトレットモール見るんじゃなかったですか?!」
温泉街を前に、真木先輩をあわわと見上げる。なんとも爽やかな笑顔で、あははと返された。
「ごめんごめん! 越名を驚かそうと思って、実は一泊で宿予約しちゃったんだよね。」
「え、ええ?! どうしましょう! 驚きを隠せませんっ。」
「下着とか着替えとか、持ってきてないよね? 調達しながら温泉街でも回ろうか。」
「……は、はい。」
いくら土日とはいえ、さすがに予告なく一泊というのはハードルが高いのでは? しかも付き合って初めてのデートで旅行って。
「あの、すみません。私、これまでデートで遠出というものをしたことがなくって。」
「そうなの?」
「彼に合わせてなるべくお金を使わないようにしていたので。家で過ごすことが多かったんです。」
「はは。生活感に慣れすぎて、それで彼氏が浮気? 彼も越名を彼女っていうより、お母さんみたいに思っちゃったんだろうね。」
「たぶん、そうなんですよね。」
「彼は越名を引き止めておくのが下手だったんだろうね。女はいつだって女として扱わないとさ。」
たまに垣間見えてしまう、真木先輩の不誠実な発言。高校時代には感じたことのなかった、真木先輩の違和感。
それでも、私が真木先輩の心を掻き乱してしまった責任は負わないと。私が真木先輩の支えになれるよう、頑張らないと!
「越名、けっこう人多いからさ、手、つないどこっか。」
「は、はい!」
「あと裏通りは絶対に1人で行かないようにね。ここの地元、ガラが悪いって有名だから。」
「わ、わかりました!」
力強く繋がれた手から、真木先輩の人柄を感じる。いつだって責任感を持ってリーダーシップを切る先輩の背中を、必死に追いかけていたあの日。
でも今は、こうして隣で手を繋いでもらっている。私が迷子にならないように。カップルというより、保護者と子供のようだ。
「先輩見て下さい! 腎臓まんじゅうです! 腎臓の形したおまんじゅうが売っっています!」
「ちょっと越名、騒ぎすぎだって。」
「見て下さい! あっちは酒粕マキアートが売ってます! マキアート?! ちょっと私、買ってきますね!」
「あ、こら越名!」
お酒はあまり飲めないけれど、酒粕は嫌いじゃなかったりする。お父さんが好んで酒粕製品を食べていたからだ。
お母さんにもお土産を買っていきたいな。
私の母親は、亭主関白の父によく尽くす母親だったが、娘の私のフォローもしっかりしてくれていた。
私が父親に厳しいことを言われれば、必ず後から『大丈夫よ。お父さんは和果を心配して言っているだけだから。』とこっそり教えてくれた。
でもお父さんが死んでからというもの、お母さんは覇気を失くしてしまい、趣味を持つこともなく、毎日ぼーっと過ごすようになってしまった。
私に彼氏ができた時も、それこそ最近、婚約を破棄した時だって、なにも言わなかった。『あら、そう。』と、まるで私に無関心であるかのような態度だった。
多分、あれは鬱病の一種だと思う。一度病院に連れて行こうとしてみたけれど、『行きたくない』と拒否されてしまったのだ。
「腎臓まんじゅう四箱も買うの?!」
「はい。三つは会社用で、一つはお母さんへのお土産です。」
「そういえばお母さん、元気?」
「ええと、はい。元気ですよ!」
「そう、それならよかった。」
先輩がふわりと笑顔をみせる。先輩には心配はかけられまいと、母の詳細はふせた。