百十一は思う。ある意味、難攻不落だと。

彼女が噂の“クズ殺し”

 背筋が凍る。名前のない臓器からぞッとするほどの感情が湧き上がる。

この僕が、どれだけけしかけても堕ちなかった越名が、今僕の前で乱れている。

「はあ、はあ、せんぱ……こわい、」
「大丈夫だよ? すぐによくなるから」
   
背中から身体を密着させて、首周りを腕で抑え込む。

彼女の喉元を圧迫させる度に、越名のなかが収縮して僕を締め付けてくる。やばい、最高に気持ちいい。

腕をゆるめれば、開放感からか越名の目には涙がたまっていた。

「こーしな。つらい? でも気持ちい?」
 
彼女の涙を舌で舐め取り、越名を落ち着かせてから再び一気に突き上げる。


 途中からは無我夢中だった。楽しくて、ただ昂る高揚感が抑えきれず精神的にも快楽にまみれていた。

そして気付いた時には、越名はすでに眠りに落ちていた。

あ、あれ……? 僕は、いつの間に果てて……?

とりあえずタオルで越名の身体を拭いて、布団をかけた。瞳の切れ端には、涙の跡が流れていた。

自分の身体も簡単にタオルで拭き、もう一度大浴場の温泉に入ろうと部屋を出ていく。

どうしよう、僕はどうしたらいいんだ。この気持ちをどうしたらいいのか。


 すでに大浴場は男女交代しており、深夜の温泉は自分1人だった。

身体を洗って、誰もいない温泉に、堕落するように飛び込む。

自分の肢体が、うつ伏せにプカプカと浮いた。

やばい……。ヤバいヤバいヤバい。越名が。あの色気も糞もない、空気も読めず自分が曲がっていると思うことはどんな状況であれ徹底的に直す女として欠陥だらけのあの越名が! 非常にかわいかった……!!
  
越名の肌、白かった。つい綺麗で色々見過ぎた。興味津々だと思われたくないから反省した。髪の毛サラサラだった! 髪が一度もわずらしいとは思わなかった! でかすぎす小さすぎない美乳に、なだらかなお尻! めっちゃエロい身体だった!!   

なんだあれ国宝級の身体じゃん。喘ぎ声までかわいすぎた! そして何より、気持ちよすぎた!!
 
でもでも、でも――――越名をイかせらんなかった……!!! ん"~~なぜ?!

ちゅどーんと頭の中で爆弾が投下される。いや僕、これでもそこそこ経験ある方ですけど? 自分の欲に忠実になりすぎて自分がイくことばっか考えてたな……。

猛省していれば、二人組の若者が温泉に入ってきた。すぐに頭を抱えて温泉の中に潜り込む。

これまで女をイかせられなかったことなんてない。むしろ狂うほどにイかせて、皆僕とのセックスに夢中になるくらいだった。

高級車や食事やプレゼントだけで女をつなぎ止めておくことはできない。そんなものはその場しのぎの満足感だけだ。人間は誰しも脳の快楽を求めているから、金持ちに加えてセックスも上手くなければ女は堕ちない。


 僕は昔、確かに優秀な人間だった。

でもいつからか、欲に溺れすぎたのだ。それまでストイックに頑張ってきた自分を解放して何が悪い? なぜ爺さんや父さんや兄さんのように優秀であり続けなければならない?

だからお前らは皆配偶者を失うんだ。忙しすぎる爺さんは、病弱だった婆さんを看取ることもなく若くして死なせた。父さんと母さんは別居状態。兄さんは2年前に結婚してつい最近離婚した。
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