拝啓、愛しのパイロット様
(難しいな)
目まぐるしく変わる気象条件、残り少ない燃料、乗客からの無言のプレッシャー。
操縦桿を握る長田もさぞや気負っているだろうと思いきや。
『宇佐美くん、大丈夫だよ。僕、こういうときほどいいランディングができるんだ』
操縦桿を握る長田は、なんとも呑気に笑っていた。
(本当だろうか?)
隣に座っていた由桔也は半信半疑だった。
長田を疑うわけではないが、悪天候のときほどいいランディングができるなんて、眉唾物である。
やがて、長田の操縦する機体は着陸準備に入り、宣言通り荒れ狂う天候の中、見事な着地を決めたのだ。
『だから言ったでしょ?』
乗客が全員機体から降りたあと、パイロットレポートを書いていた由桔也に、長田はケロッとした顔で言い放った。
由桔也も頭の中でシミュレートしたが、もし自分が操縦桿を握る立場だったらあれほど綺麗に着地させられたか定かではない。
それ以来、長田と事務所内で顔を合わせると、たわいもない世間話に興じるようになったのだ。