拝啓、愛しのパイロット様

「やるねえ。熱心なファンもいる上に、CAにもいつも熱い視線を注がれている宇佐美くんを捕まえた幸運な『ミス・バタフライ』がいたもんだ!」

 長田は独特な言い回しで露骨に冷やかした。
 蝶のように捕まえるのが難しいという意味では、間違っていないのかもしれない。

「ねえねえ、彼女ってどんな人?」
「教えませんよ。それに、まだ恋人じゃないです」
「宇佐美くんが苦戦するなんて、よっぽどの女性なんだろうね」

 長田の呟きに思わず頷きそうになり、すんでのところでこらえる。
 苦戦どころの話ではない。
 自分の気持ちを伝えたものの、小町からは『応えられない』とすげなく言われてしまった。
 普通なら諦めるところだが、由桔也は逆に小町への想いがより強まる結果になった。

(小町は知らないんだ)

 SNSの件が自分の預かり知らないところで話題になり、ありがたい反面、由桔也は心のどこかでそんな状況に飽き飽きしていた。
 皆、見た目ばかりを褒めそやし、中身は二の次。

 学生時代から、騒がれることはよくあったが、まさか就職しパイロットになったあとまで、煩わされるとは思わなかった。
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