拝啓、愛しのパイロット様
◇
(実登里先生、遅いなあ)
小町はテーブルの上に置いたスマホに、チラリと視線をやった。
現在時刻は午後三時二十分。
約束の時刻から二十分が過ぎても、実登里はまだ待ち合わせ場所のカフェに現れない。
そのままさらに十分が経過し、注文していたカフェオレを半分ほど飲み終わったところで、待ちに待ったメッセージが届く。
『ごめんなさい、小町さん。腰を痛めてしまって、今日は行けそうにありません』
メッセージを見た瞬間、「えっ!?」と声が裏返る。
(大丈夫なのかな?)
几帳面さが書く文字にも表れる実登里が、事前に連絡できなかったくらいだ。よほど身体がつらいに違いない。
小町が身体の具合を確かめるため、メッセージに返信しようとスマホを持ち上げたそのときだ。
「君が仁科さん?」
突然名前を呼ばれ顔を上げると、目の前には爽やかなブルーのシャツにブラックのボトムスを着た長身の男性が立っていた。
「あなたは……?」
そう尋ねながら、小町はつぶさに男性を観察した。
美しい山脈を思わせるスッとのびた鼻梁と自信に満ち溢れた輝くような大きな瞳。滑らかな弧を描く頬から顎にかけてのラインには、ため息がこぼれそうになる。
目を見張るほど整った顔立ちをしているその男性は、小町にニコリと笑いかけた。