拝啓、愛しのパイロット様

「医者に連れて行ったら、数日安静にしていればよくなると言われた。痛み止めももらったし、今は布団の上で大人しくしているよ」
「よかったあ」

 実登里の様子を聞いた小町は、ホッと胸を撫で下ろした。

「実登里先生が来られないなら、打ち合わせは別の日にします?」

 気を使って提案すると、彼は「いや」と首を横に振った。

「個展の日程も余裕があるとは言えないし、今日の内に色々と決めておきたい。だから俺ひとりでも、ここに来たんだ」

 実登里から個展は十一月開催予定だと聞いている。準備期間はあと半年ほどだ。

「でも、ご本人がいないのに、話を進めても大丈夫なんでしょうか?」
「個展の準備は、俺が主体で進めているから問題ない。母には作品に集中してもらいたいし。それに、休みの日に何度も時間を作ってもらうのも、仁科さんに申し訳ないからな」
「わかりました」

 実登里が不在でも問題ないなら、彼の言うように話を進めておく方がいいだろう。
 納得した小町はトートバッグからカタログの束を取り出した。
 この日のために、あらかじめ準備しておいたものだ。
 小町は名刺入れから、名刺を一枚取り出し、両手で由桔也に渡した。

「改めまして、スターライト文具で営業を担当しております。仁科小町です。よろしくお願いします」
「よろしく」

 由桔也は名刺を受け取ると、テーブルの上に置いた。
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