拝啓、愛しのパイロット様
形式通りの挨拶を済ませ、彼が椅子に座ると、小町はバッグから仕事用の手帳と愛用のボールペンを取り出し、ヒアリングを始めた。
「早速ですが、記念品にかける予算はいくらぐらいでしょうか?」
「二十万を予定している」
「来場者の数はどれぐらい見込んでいます?」
「招待状は二百通送付する予定だが、ホームページで告知したらもっと来るかもしれない。前回の個展のときは三日で八百人ぐらいだったかな」
「そんなに集まるんですか!?」
小町は驚きの声をあげた。
「長年付き合いのある企業の関係者とか、書道スクールの生徒さんとかが来てくれるんだ。告知を見た一般のファンも結構いるな」
実登里は何年か前に、有名なポテトチップスのロゴやドラマの題字を手掛けたこともあり、一般のファンも多いという。
(さすが実登里先生)
任せてくださいと安請け合いしたが、思ったよりも大事になってきた。
(実登里先生のファンのためにも、いいものにしなくちゃ)
小町は決意を新たにして、由桔也に向き直った。
他にもいくつか質問をして必要事項を洗い出すと、ようやくヒアリングが終わる。
「それにしても、お詳しいんですね」
小町の質問に対し、淀みなく正確に答えてくれる彼には驚かされるばかりだ。
個展の運営には詳しくないが、息子が準備を手伝うのはやはり珍しいケースではないかと思う。