拝啓、愛しのパイロット様

「個展を開催するときは、いつも家族総出で準備を手伝っているんだ。昔は父が色々と動いていたんだけど、今回は俺が代わりに。繁忙期じゃなければ、普通の会社員よりは勤務スケジュールに余裕がある職業だから」

 たしかに言われてみれば、由桔也は普通の会社勤めのビジネスマンとは違う独特の雰囲気を醸し出している。

「お職業を伺ってもいいですか?」
「旅客機のパイロットだ」
「パイロット?」
「そう、ブルーセントラルジェットラインで副操縦士をしている」
「そうなんですね!」

 パイロットと聞いて、妙に納得してしまう。
 小町ですら旅客機のパイロットがどれほど大変な職業か知っている。
 操縦する免許を取るだけでも、海外まで研修に行ったり、ありとあらゆる状況を想定した様々な飛行訓練をしたりと、普通のビジネスマンと仕事内容がかけ離れている。
 その上、ブルーセントラルジェット――通称BCJといえば、国内でも一二を争う大手航空会社だ。
 そんな会社でパイロットとして活躍する由桔也はとんでもないエリートに違いない。
 声色や表情から感じる余裕は、自信の表れなのだろう。

「宇佐美さん、凄い方だったんですね」
「そうでもないよ」

 言われ慣れているのか、褒め言葉はさらりと受け流された。
 謙遜や、自慢にも聞こえず、嫌味がない。
 彼にとっては当たり前の賞賛なのだろう。
 由桔也からはパイロットの過酷さが微塵も感じられず、飄々とした雰囲気をまとっている彼にパイロットという職業はうってつけな気がする。
 そんな風にとりとめなく考えながらカフェオレを口に運んでいると、由桔也がおもむろに口を開く。
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