拝啓、愛しのパイロット様
食事を楽しんだあとは、彼の運転する車で家まで送ってもらうことになった。
車が自宅マンションのロータリーに到着すると、車から降りる前に運転席の彼に向き直る。
「食事をご馳走になった上に、送ってくださって、ありがとうございます。今日は楽しかったです」
小町は自分の正直な気持ちを伝えた。
実登里へ渡すプレゼントを買うだけだったのに、いつのまにか彼と過ごす時間が名残惜しいものに変わっていた。
(不思議な人)
数日前まで顔も名前も知らない人だったのに、こんなに楽しい気持ちになるなんて。
そんな小町の気持ちを知ってから知らずか、由桔也は極上の笑みをたたえながら告げる。
「次はいつ会える?」
「……え?」
思いもよらない問いかけに、小町は言葉を詰まった。
たしかに、記念品の話は始まったばかりで、今後も内容を詰めなければならないけれど、あとはメールや電話でやり取りすれば事足りる。
これ以上、ふたりきりで、直接顔を合わせる必要はないからこそ、余計に今日の別れを惜しんでいたのに。
こちらを真っ直ぐ見つめる彼の瞳には、違う意味の期待が込められているように感じる。
「えっと……」
なんと返したらいいのか困っていると、由桔也はさらに続けた。
「仁科さんのことがもっと知りたいんだ」
甘い響きを含んだ真摯なお願いに、ドキンと胸が高鳴る。