拝啓、愛しのパイロット様

 二十分後、助手席の窓ガラスがコンコンとノックされる。
 俯いていた顔を上げるやいなや、ホッと胸をなで下ろす。
 窓ガラスに映っていたのは、心配そうに小町を見つめる由桔也だった。
 由桔也はロックを解除し、ドアを開けると、運転席に身体を滑り込ませた。

「落ち着いたか?」
「すみませんでした」
「床に置いてあったものは全部片づけておいたよ」

 どうやら彼はひとりで後片づけをしてくれたようだ。

「お手数おかけしました」

 情けないやら、恥ずかしいやらで頭の中がいっぱいになり、膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめる。
 先ほどまでの楽しい気分がすべて吹き飛んでいく。

「彼氏がやったってことないよな?今はいないって言ってたし」
「はい」
「じゃあ悪質な悪戯か?誰がやったか心当たりはあるか?」

 小町はとっさに顔を伏せ、唇をぎゅっと噛み締めた。

「実は……ひとりだけ」

 真っ先に頭に思い浮かぶのはあの人しかいない。
 なぜか小町を気に入り、今日も待ち伏せしてきた神城だ。
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