拝啓、愛しのパイロット様
「警察には行きません」
「なんで?」
決意を持って宣言すると、由桔也は不満げに理由を尋ねた。
つきまとい行為なら、警察のお世話になるのが普通だ。当然の反応だろう。
「もしかして、心当たりがあるって言ってたのは、わりと身近な人?」
小町は無言のまま否定も肯定もしなかったが、否定しない時点で答えは決まったも当然だ。
「職場の人とか?」
言い当てられた小町は観念して小さく息を吐いた。
「大事になったら、会社にいられなくなるかもしれません。まだ辞めたくないんです。あの会社が好きだから。それに、まだ夢を叶えられていないし」
自分の考えた文房具を商品化するのは小町の長年の夢だ。
今はまだ辞めるわけにはいかない。
「それに、あの人も時間が経てば冷静になるはずです。世の中には私よりも素敵な女性がたくさんいますから」
小町は由桔也に心配をかけないように、あえて明るく振る舞った。
希望的観測だが、時間が味方してくれるだろう。
だって小町の両親も、好き合って結婚したのに、最後には各々罵りあって離婚したのだ。
人の心は熱しやすく、冷めやすい。
移ろう季節のように気持ちが変化していくのを、待てばいいのだと腹をくくる。