拝啓、愛しのパイロット様
「だからって!君が我慢することないだろう?」
それまで平静を保ち続けていた由桔也が、憤りをあらわにして声を荒らげる。小町の態度は犯人を庇おうとしているとしか思えなかったのだろう。
「平気ですよ。私、根性だけはあるので」
「近くに頼れる人はいるのか?親とかきょうだいとか」
「両親は私が五歳のときに離婚しました。色々あって祖母に育てられましたが、今は介護施設にいるので……」
「そうか……」
家族のことを話すと、由桔也は難しい顔つきでなにかを考え始めた。
このまま車の中にいても埒があかないが、かといって自分の部屋に帰るのもまだ怖い。
「今日はホテルに泊まろうと思います。せっかく家まで送っていただいたのに、すみませんでした」
小町は手短にお礼を言って、足もとに置いていたトートバッグを持った。
ところが、ドアに手をかけると同時に慌てた様子の由桔也に腕を引かれる。
「待ってくれ。今から寝る場所を探すくらいなら、俺の家に来ない?」
「え?」
突然の提案に小町は目を瞬かせながら、運転席の由桔也を見つめた。