拝啓、愛しのパイロット様

「困っている仁科さんをこのまま放っておけない」
「でも……」
「今から泊まれるホテルを探してたら夜が明けるよ。こんな日こそぐっすり眠りたいだろう?ほら、シートベルトを締めて」

 由桔也は小町の返事を待たずに、車のエンジンをかけた。
 彼の提案を断るか、受け入れるか。
 空気の読み合いの末に負けを認めた小町が、言われた通りシートベルトを締め直すと、車がゆっくりと発進する。

(ダメだ。今日は思考がまとまらない。)

 やや強引だったが、彼の申し出は正直言ってありがたかった。
 週末の夜、運よくホテルの部屋が空いているとは限らない。
 下手したら、まともに寝られずに、手頃なファミレスやマンガ喫茶で夜を明かさないといけなかったかもしれない。

(プレゼントを買うだけだったのに、とんでもないことになってしまった)

 小町は由桔也に気づかれないように、小さなため息をついた。

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